斉通 2017年4月②号

        

「安倍政権下での金融政策が株高を招いた」は本当か!?
  
 安倍政権下での非伝統的金融政策である「量的・質的金融緩和」(注1)が株価の上昇をもたらしたと信じている発言も多い。しかし、それは本当だろうか。
 
 日銀が「量的・質的金融緩和」をする根拠は、「①量的・質的金融緩和をすれば、予想物価上昇率(注2)が上がって予想実質金利(注3)が下がり、②予想実質金利が下がると投資が増加して、景気がよくなる」と想定したからである(日銀副総裁発言)。
 しかし、この考え方は誤りであろう。
 まず、①金融緩和をしても、銀行貸出も通貨供給量(注4)も増えず、物価は上昇しない。実際、2016年の日本の物価上昇率はマイナスとの推計がある(2016年10月時点でのIMF推計)。また、②利子率の低下は投資に影響を与えない。企業が投資を決めるのは、沢山売れる時や競争力を高める時なのだ(経企庁調査)。
 
 では、なぜ2012年後半に日本の株価は上昇に転じたのか。
 2012年後半当時に割安感のあった日本株を、外国人投資家が買いに走ったことが原因と予想される。実際、2012年10月から、外国人投資家による日本株の買い越しが始まり、2012年11月から日経平均が上昇に転じたのである。
 
 ここで気付かれた方も多いかもしれない。時系列で流れをみてみると、安倍政権発足と金融緩和開始よりも前から、株価は上昇していることがわかる。
    2012年10月~   外国人投資家による日本株の買い越しスタート
    2012年11月~   日経平均が上昇に転じる!
    2012年12月     民主党から自民党への政権交代
    2013年4月      日銀総裁に就任した黒田東彦氏の下で、
                 最初の金融政策決定会合
 
 理論的にも、時期的にも、安倍政権下での「量的・質的金融緩和」と株価上昇は関係ないのである。
 


  (注1)日銀黒田総裁が2013年4月に発表した量的・質的金融緩和=①国債購入対象を拡大し、日銀が国債を購入。
      長期国債保有額を2年で倍増。②上場投資信託を年間1兆円購入。上場不動産投資信託を年間300億円購入。
  (注2)予想物価上昇率=家計や企業が予想する将来の物価上昇率
  (注3)予想実質金利=名目金利から予想物価上昇率を差し引いた金利
  (注4)通貨供給量=金融機関と中央政府を除き、国内の経済主体が保有する通貨の合計


2017年04月09日